一人はみんなのために、みんなは一人のために、当事者は当事者のために
AWS(Abused Women Support)

応援メッセージ

当事者の声を聴くことと被害者センタード(被害者中心主義)の視点を


2012/04/14
森 望さんからの応援メッセージ 

 私は、DVのサバイバーです。DV被害は他人からの一過性の一般的な犯罪より悪質であると思います。親密な男性からその信頼関係のもとに継続的に暴力を振るわれることで、被害者は心身にダメージを受け、それは深く長く続きます。DV被害者として願うことは、DVが社会からなくなること、今一緒に住んでいるならば、その夫や恋人が暴力を止めること、子どもや孫がDVの被害者にも加害者にもならないことです。加害者の逮捕がDVの再発防止に有効であることは明らかであり、私の経験でもいくつかの節目で元夫が何らかの処罰を受けていたらとずっと思っていました。警察・司法関係者はDVの暴力を見過ごさないという強い意識を持ってもらいたいと思います。被害者とその子どもたちの安全の確保をしっかりと最優先に考えて欲しい。警察への直結システムがあれば、現住所に住民票を移し、安心して生活できると思います。

●DV支援にかかわる人たちへの研修が必要

警察官・裁判官・医療機関・福祉関係に徹底的な研修をしてほしい。DV関係機関の職員、調停委員、家裁調査官、市民課、健康保険課、税務課、教育委員会の職員、学校、保育所、幼稚園、児童相談所、民生委員、鍼灸師、会社の労務担当者などにも。民生委員はDV被害者の味方になってくれると物心両面(家具や電化製品のリサイクルや地域情報に通じているので)の支援が受けられる可能性があると思います。

研修内容については、『DVは女性に対する暴力であり、女性の人権を踏みにじり、支配し、コントロールするものであり、性差別であるという視点』に立ち切ることが大切だと思います。DVの発見、危険性の判断、適切な情報と他機関への照会、被害者の人権の尊重と二次被害の防止を入れること。方法としては、講義のような一方通行だけではなく、ロールプレイなどの参加型も必要です。また必ず当事者や援助機関を含めたグループで評価、点検を行い、改善策を提言することが重要です。

●社会教育に一貫としてDV防止を

学校教育、社会教育においてジェンダーと人権の視点に立ったDV防止教育を義務付けてほしい。DVを防止していくために、創意工夫を凝らし、特に力を入れてほしい分野です。暴力が起こること、そのものを防ぐコミュニティ防止活動が必要です。「暴力の問題、DVの問題は社会のさまざまな差別構造と不可分に結びついていることです。DVは一人の男が妻を殴りたいと思ったから起きた出来事ではなく、女性が十分な収入を得られる仕事が少ない、保育が少ない、自分の健康保険がない、シェルターが足りないといった社会的システムの問題でもあるのです。社会全体が抱える様々な不平等と不正義の問題の解決を同時に進めていかない限り、DVなどの暴力問題の解決はあり得ないでしょう。」(ドメスティック・バイオレンス 森田ゆり著からポール・キーベル氏の部分より抜粋)

●DVにかかわる人すべてに基本理念の徹底を

DV被害を経験した当事者として、DVにかかわるすべての人々に下記の基本理念の心を大事にして欲しいと思います。下記の文章はアメリカ司法省が作成したマニュアル「将来的に望ましい実務」からの抜粋です。日本においてもDVの根絶と防止のためにとても重要なことだと思います。

1.女性に対する暴力問題の理解が介入の理論的裏付けとなること。

女性に対する暴力の本質は「支配」にあり、女性に対する暴力は重大な犯罪である、被害者の安全と福祉は司法による介入の至高の目標であること。女性に対する暴力への早期介入は、加害者への制裁と相まって、被害者の回復を促進するものであること、被害者は危険と安全の最適の判断者である。

2.サービスおよびプログラムにおける被害者中心主義アプローチの採用

被害者の安全を最優先すること、被害者が暴力から逃れて援助を求めるうえでの障害を認識すること、被害者の尊厳と自立を尊重すること、被害者の秘密を守ること、サバイバーによるフィードバックを重視すること。

3.女性に対する暴力犯罪すべてを深刻かつ公正に取り扱うこと。

4.犯罪者に犯行の責任を負わせることである。

被害者に対してカップルカウンセリングを受けさせたり、加害者に傷がつくからと被害を届け出ないなど、被害者が自らの要望を抑え込むような行動を期待してはならない。

5.アドボカシー(支援)の概念を理解し支持することである。

被害者の意思に基づく適切なサービスの提供とともに、女性に対する暴力を許容しない制度的な保障が必要である。効果的な支援を行うためには、当事者の立場に立って支援を行ってきたNGOの参画が不可欠である。

(2000年秋から2002年春まで「女性の安全と健康のための支援教育センター通信」からの抜粋)
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