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「モラハラ被害者同盟」管理人熊谷早智子氏へのインタビュー


2012/06/05
『モラハラ被害者同盟』というサイトが、多くのモラハラ被害者を救済しているという噂を聞きつけ、さっそく主宰の管理人、熊谷早智子氏にインタビューをしました。
このサイトには、被害当事者でもある熊谷氏の思いが凝縮されています。
ぜひ訪問されることをお勧めします。

●モラハラ被害者同盟設立の経緯
熊谷氏が夫からモラハラを受けていたことを確信し、離婚に至った直後の2003年に「モラハラ被害者同盟」というサイトを一人で立ち上げた。幸いPCの知識があり、ウェッブを自分で作ることができたことがすぐに開設できた理由である。当時は、モラハラやDVという言葉すらあまり知られていなかった。情報や知識がないなかで、フランスからきた著作に触発されて「モラハラ」の存在を知った。被害を受けている人にもっと知ってもらいたい、自分ももっと情報がほしいというのが当時の活動の原動力となった。2年間は試行錯誤が続き、いやな目にもあったが、2年経過するころには落ち着くようになった。
当時は地方に居住していたこともあり、なんとかモラハラの存在を知ってもらうためにとった手段は、メディアにモラハラを露出させることであった。特にTVは効果があった。フジテレビがモラハラを題材にしたミニドラマを制作してくれたことが急速に認知度を高める結果を生んだと思う。

●管理人熊谷氏とメンバーとの関係
同盟とはいえ、実際は熊谷氏が一人で運営し、さまざまな決定をしている。
ルールは批判しないこと、励まし勇気づける言葉をかけることである。これに違反するコメントがくるとすべて削除しており、ひどい人の場合はアクセス制限をして、サイトに入れない措置をとっている。また、架空の名前、架空の家族設定、架空の地域をつくって投稿するようルールを徹底している。目的は個々のケースの詳細にあるのではなく、私の場合はこうやって生き延びたよと、先輩が後輩を励まし合える場であることが原則だからだ。

●HP、BBSへのアクセスなど
9年間でトップページへのアクセス数は180万件、ページビューについてはカウントしていないがかなりの数になると思う。
BBSと呼ばれる掲示板は現在4つを運営している。ほぼ毎日30から40件の書き込みがあり、自動的にみんなからの声が蓄積されていく仕組みになっている。管理人の役割としては、ときどき覗いて、変な書き込みがあれば削除する程度の仕事量で済んでいる。また、これは重要だとおもうスレッドは永久保存の場所に移し替えを行い、いつでもだれでも参考にしやすいように工夫している。
いまでは、サイトを訪れる人たちとは、こちらからの呼びかけやアンケートなどにはすぐに答えてくれる良好な信頼関係が構築されている。

●加害者対策
このサイトは会員制やパスワード制をとっていない。誰でも入って書き込めることが特徴である。だから男性が女性になりすました書き込みもたまにある。なんとなくわかるので、「あなたもわかっているでしょ」と言外の思わせぶりなコメントを返すと来なくなるのが通例である。ミクシ―に加害者(と思われる)の男性コミュニティができている。そこでは活発なコミュニケーションがなされており、裁判で勝つにはこういう証拠が有利だとかうちはこれを提出されてこまったから、気をつけるようにという具体的な支援がされている。被害女性側ももっと情報収集をして、備えることが重要だと思う。情報は漏れることがあるので注意が必要。またクローズドにすればするほどそれを守るエネルギーが必要となってしまう場合が多い。9年間の成果として、当掲示板の書き込みが裁判の正式記録として提出されるまでになった。妻側はいつからこんなことが起こったかを自分が書いた書き込みを提出しているし、夫側も妻があることないこと嘘を言っているといって提出している。サイトでのアンケートに答えてくれた妻に夫の職業や役職をきくと、社会的地位の高い職業が多いことも判明している。

●現在の運営方法
コピーライトについては一応記載しているが、実際はコピーしてもOKとしており、情報が洩れ出たとしても厳密に追及することは一切ない。この概念が広がることが重要なので、制限はなるべくかけないで運営している。また、危険なこととトラブル回避のためリアルな場はもっていない。ただ、沢山の人たちがブログを立ち上げ、それぞれの場所で繋がったことで、各地でリアルな当事者ミーティングが実施されている。よばれて参加することはあるが、「モラハラ被害者同盟」としては関知しない。彼女たちから私のサイトは「ふるさと」と呼ばれている。
また、DVやモラハラで悩んでいる人たちの参考になる情報を提供することもサイト開設の大きな目的である。DVやモラハラを理解してくれている心療内科や精神科医師、弁護士や公的相談所などの情報を求めてやってくるケースも多い。その場合は個別にメールで情報を提供するようにしている。その際に情報提供の見返りとして、結果どうだったかを必ずフィードバックするように義務付けている。精度の高い情報をより多くの人たちに届けたいと思うからである。

●今後について
サイトを訪れた人たち約1500人にアンケートをとり、その結果を受けてさまざまな著書を書いてきた。「家庭内モラル・ハラスメント」や「母を捨ててもいいですか」など。まだまだ言いたいことは山ほどある。フランスで家庭内モラハラ法を通すために活動してきた女性に会いに行った。彼女には、「日本では、まず労働の場でのモラハラをなくす法律が先だ」と言われている。日本では職場でのパワハラをもっと問題視していく必要があると思う。

私の今までの人生はこの仕事をするためにあったようなものだと思う。キャリアを積んだ仕事を持ち、PCの知識があり、モラ夫に出会い、BBSで苦労してきた過去から導かれて、今モラハラを広める活動をしている。経済的にも、肉体的にも、精神的にも自分が無理をしてまでやるのではなく、楽しんでやっていけるよう自分自身をコントロールしている。私自身、モラ夫と決別することができて、よかったと思っている。ずっと落ち込むこともなく過ごしてきた。多くの女性たちに幻想や依存から脱却し、よりよい自分のあり方や生き方模索するきっかけとして利用していただけると嬉しいと考えている。

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